日本の地方を旅していると、たびたび出会う光景があります。かつて人の声で満ちていた古い家が、いまは雨戸を閉じ、静かに眠っている。手をかければまだ何十年も生きられる家。けれど、住む人はもういない。

全国の空き家は900万戸に迫り、その相当数が、ただ朽ちさせるには惜しい古民家です。

合同会社HOTAL.は、この家に、もう一度灯をともす会社です。

なぜ、ホテルではなく一棟貸しなのか

私たちがつくるのは、ホテルではありません。民家の、一棟貸しの宿です。

ホテルは、効率を突き詰めた発明です。同じ部屋を、同じ品質で、たくさん。それは社会に必要な仕組みですが、私たちが届けたいものとは少し違いました。

一棟貸しなら、その家のかたちに、滞在のすべてを合わせられます。柱の傷、土間のひんやりした感触、縁側に差す午後の光。その家にしかないものを、ひとつのグループだけの時間として渡せる。

同じ宿は、ひとつとして存在しない。 それが、私たちの出発点です。

「HOTĀL.」という名前 — 三つの軸

社名には、私たちの拠って立つ三つの軸を重ねました。

一、灯す ― 土地に、小さなひかりを

日本のあちこちに眠る民家。手をかけ、もう一度灯せば、訪れた人の心に長く残る場所になる。小さな灯が集まり、やがてその土地に新しい経済と、誇りを取り戻していく。

二、宿す ― 一棟まるごとの宿として

「ホテル」と「ホタル」、似た音にこめたのは、もてなしの場であってほしいという願い。ホテルではなく、ひとつのグループがその家を丸ごと使い切る、一棟貸しの宿。ひかりを宿す家を、そのまま届けます。

三、迎える ― ホスピタリティの心で

設計から運営まで、ひとつのチームで担うからこそ、空間にも時間にも、もてなしの心を編み込める。チェックインで終わらない、滞在のひとときひとときに、迎える気持ちを宿します。

誰が、これをやるのか

代表の植松長門は、20年以上、内装・外装の設計実務に携わってきた建築設計者です。世界最大級の建築・デザインファームで、ホテル・商業施設・空港など「人が集い、もてなされる空間」を国内外で手がけてきました。

2019年に独立し、設計の領域を空間からブランドへと広げ、そしていま、HOTAL.として「宿そのものをつくり、運営する」立場に踏み出しています。

設計する人が、そのまま運営する人になる。

だからこそ、一棟ごとの一貫性と、細部の質に責任を持てる。これが、私たちの事業の強みです。

これから

ひとつの灯は、小さい。けれど、その灯を世界中の感度の高い旅人へ届け、地域に経済と誇りを循環させていく。小さな灯が集まれば、里山の夜は、少しずつ明るくなっていくはずです。

合同会社HOTAL.は、その最初の一歩を踏み出しました。この Journal では、物件を探し、再生し、宿として迎えるまでの過程を、正直に記録していきます。

次回は、「ひかりを、宿す。」という言葉と、それを支える四つの軸について。

— HOTĀL.

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